“『逆襲のシャア』(一九八八)のメカデザインという仕事が舞い込んできました。これはサンライズを併合しつつあったバンダイが、ガイナックスになんか仕事やらないと、本当にあいつらら倒産しちゃうよ、という気遣いで回してくれた仕事です。
最初は、主役メカ・ガンダムのデザインコンペだったんです。『逆襲のシャア』で、新しいガンダムのデザインを募るという。その中から良いデザインを選ぶシステムです。
デザインは、本編で使わなくてもお金はくれるという約束でした。そこがガイナックス救済ということだったんですね。
それまでのガンダム作品はコンペじゃなくて、大河原(邦男)さん(一九四七~。『機動戦士ガンダム』のモビルスーツをデザイン。日本初のアニメのメカデザイナーとしても有名)★とか、富野さんが指定したメカデザイナーがデザインしてたんですけど、いろんなガンダムを出したいバンダイが「今回からちょっとコンペをやってみよう」って事になったんですね。
バンダイからその話が出たとき、富野さんは「ガイナックスという会社があるんですね」って。知ってるくせに知らない振りして「見たこともありません」って言ったそうです。嘘つけ!(笑)
で、デザインの発注を頂きました。ガンダムのデザインと言ったら、当然庵野です。
「庵野君、ガンダムのコンペって話が来てるんだけど、どう?」って言ったら庵野が「やります」って言うんで任せたんです。
ところが庵野君、締め切りギリギリまで引き延ばして、最初のガンダムにそっくりの絵を、安彦さん(─良和。一九四七~。『』の絵コンテやカッコのキャラクターデザインなどを手がける。漫画家デビュー作『アリオン』のアニメ化では監督も務める)★が描いたタッチそっくりに描いたんですよ。監督に出したら富野監督、涙を流して怒ったそうです。
「こいつは俺に何を言いたいんだ!」
つまり庵野君のメッセージは「ガンダムは最初のガンダムで充分で、それ以外のものは作る必要もない」というネガティブなものだったんですね。
僕にしてみれば、なんでそんなのを提出するのかワケがわからなかった。
なぜあそこまでそっくりにガンダムを描くのか、情熱をもって描けるのか。富野さんが嫌いじゃないのになぜそれを出せるのか。さっぱりわかんない。
ひょっとして「あえて苦言を呈す」みたいな気持ちがあったのかもしれないけど、あえて苦言を呈す人間があんなに嬉しそうに描くがないと思う。散々原画集見て、ほんとに嬉しそうに「安彦さんはこうだー!」って。
それを見てなぜ富野さんが涙を流して怒るのかもよくわからなかったです。未だに聞けないんですよ。この間会ったときも「『逆シャア』の時はどう思ってました?」という話も出なかったぐらいですから。
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